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第5回栃木CT研究会

文責 済生会宇都宮病院 土屋 恭子

「造影剤腎症に関する最近の話題」
造影剤腎症と血清クレアチニン値の問題点を示していただき、推定糸球体濾過値(e-GFR値)がより正確に腎機能を評価する指標として、万能ではないが望ましいと述べられました。造影剤腎症は今後CTで造影剤を使うにあたってクリアしなければならない課題であることを再認識させられました。

「インジェクターでのICタグ活用法」
ICタグ付きの造影剤シリンジを使用することによって、再使用の禁止、オートリターン制限、使用期限切れの回避、自動セット、注入履歴の管理など、検査効率と安全性でのメリットや、インジェクターからの造影剤注入情報のRISとの連携や注入圧曲線のDICOM 画像化によって、造影剤注入条件の再現性が可能となるシステム構築の利用について紹介がありました。今後、各造影剤メーカーがICタグ付きのシリンジ製剤に対応することによって、より利用価値が広がっていくと思いました。
CT関連情報提供の最後に、足利赤十字病院より、クレアチニン値とeGFR値を30秒で測定できるハンディタイプの機械「スタッドセンサー」の運用についてご紹介いただきました。費用の面では問題があるものの、実際に採血結果を待たなければならない場合や他院紹介などで採血結果が無い場合などに手軽に素早く活用できるという面で大変有用であると思いました。
 
「GE社製750HDを使用して伺える、今後のCT装置の開発と展望」
新開発の検出器であるガーネット検出器によってView数を従来の984viewから約2.5倍の2460viewへと大幅に増加することができ、空間分解能が向上しより高精細な画像が得られるようになったとのことでした。また、逐次近似法を応用した画像再構成法であるASiRにより、従来と同じ画質では被曝線量を半分以下に抑えられる利点が提示されました。X線エネルギー(管電圧)を高速に切り替えてほぼ同時に2種類のエネルギーデータを収集するDual Energyスキャン(Gemstone Spectral Imaging:GSI)の特徴についても、基礎実験をもとにわかりやすく解説していただきました。

「SOMATOM Definition Flashの特徴と使用経験:使用してみてわかったこと」
X線管が2つ搭載された128スライスの装置の特徴や、テーブルスピード秒間46cmのハイスピードで1回の撮影が1mSv以下の線量に抑えることができるFlash Spiral Scanの利点や欠点について示していただきました。心臓においては症例にあった撮影モードの選択の必要性、小児検査においての低被曝や短時間撮影での有用性、腹部においてはコントラストやノイズ特性の改善点、また、Dual Energyのアプリケーションの利用と今後の活用について、それぞれの有効利用法や問題点を提示しながらわかりやすくお話ししていただきました。

「320列 Area detector CT(Aquilion ONE)の臨床応用」
320列の面検出器によって、1回転0.35秒で最大16cmの範囲の撮影が可能である。コーン角の補正を行う画像再構成法がバージョンアップしVolumeXact+となり、全体のVolumeの散乱線の影響を補正することが可能になった。Wide Volume Scanで生じていたつなぎめでの段差や濃度ムラを解消できる利点について、基礎実験と実際の症例を提示していただいた。心臓や頭だけでなく腹部臓器での臨床利用においても、Volume Scanによるダイナミックスタディで得られた4D画像やBody Perfusionでの機能診断の有用性について解説を交えながら紹介していただいた。

3つの講演を通して学んだことは、臨床で使用している装置のハード及びソフトウエアが持つ高い技術に追従するのではなく、その技術を十分に理解し、その特徴を生かして装置を取り扱うことが大切であるということです。

この栃木CT研究会も第5回目(5年目)となりましたが、77名と大勢の方々に参加していただき、大盛況に終わることができました。前日の大雪にもかかわらず県内はもとより、遠方の県外からもお起こしいただき、今回の研究会への関心の高さが伺われました。引き続き世話人共々、皆さまと共に興味を持ち良き情報交換ができるような企画を考えていきたいと思います。
 最後になりますが、ご講演いただいた各先生方に改めて深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

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